屋根の軽量化が推奨されている理由と工事方法について解説
地震大国である日本において、年々地震に対する意識が高まり、耐震性能も向上しています。さまざまな耐震対策がありますが、屋根を軽くすることも耐震性を上げるひとつの手段です。
そこで今回は、屋根の軽量化が推奨されている理由について解説します。さらに、屋根の工事方法や工事に利用できる補助金・助成金についても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
屋根の軽量化が推奨されている理由
屋根の軽量化が推奨されている理由としては、屋根の重さは耐震性に大きく影響するためです。屋根は建物の一番高い場所にあるため、屋根が重いことで、建物の重心が高くなります。
地震は振り子のように大きく揺れます。重心が高くなると、建物の基礎や柱、壁などの構造体に大きな負担がかかり、建物の倒壊を招く恐れがあります。
さらに、屋根が重いと家を押しつぶしてしまう危険性もあるのです。こういった点が、屋根の軽量化を推奨している理由になります。
屋根の軽量化は代表的な耐震改修のひとつ
重い屋根材を使用している場合は、屋根材を軽い素材のものへ変更することで建物の重量が減るため、耐震性能を向上させることができます。しかし、ただ屋根を軽くすればよいかというと、そうではありません。
しっかりとした耐震性を保つためにはバランスが重要です。建物が地震によって普段とは違う負荷がかかった場合、屋根や基礎、柱などがうまく分担してそれぞれが支えられるようにする必要があります。
地震によって力が加わった場合、どの場所にどの程度の負荷がかかるのか、どの場所に柱や壁を設置すれば負荷に耐えられるようになるのかを詳しく調べる必要があります。
そういった家全体にかかる部分を調査するのが「耐震診断」になります。耐震診断は、住宅の耐震化を進めるうえでの第一歩になるのです。
耐震化の方法
主な耐震化の方法としては、以下の4つがあります。かんたんにご説明します。
- ・屋根の軽量化
- ・壁の補強
- ・建物の基礎を補強
- ・接合部を補強
屋根の軽量化
屋根を軽量化することで、建物にかかる地震の力を減らすことができるため、大きな地震でも倒壊の恐れが減ります。
壁の補強
木造の建物においては、骨組みとなる柱や土台、梁を組んだだけではかんたんに変形してしまいます。
柱と柱の間に突っ張り棒となる筋交い(すじかい)を入れたり、柱の軸組全体に構造用合板と呼ばれるボードを面として張ることで、強い壁(耐力壁)にできます。窓などの開口部を減らすことも有効です。
建物の基礎を補強
基礎や土台がしっかりしていないと、地震が来た際に倒壊の恐れがあります。アンカーボルトなどの補強をすることで耐震性を高めます。
接合部を補強
柱や梁、筋交いなどの接合部に、専用の補強金物を設置し、それぞれの部材が一体となるようにしっかりと固定させ、耐震性を高めます。
代表的な屋根材の種類と重さ
屋根は軽い方が耐震性に有利と冒頭でお伝えしましたが、ここでは代表的な屋根の重さについて解説します。
- ・土葺き屋根:約60kg/平方メートル
- ・瓦屋根、セメント瓦:約50kg/平方メートル
- ・スレート屋根:約20kg/平方メートル
- ・金属屋根(ガルバリウム鋼板):約5kg/平方メートル
土葺き(つちぶき)屋根は、昭和のはじめ頃に多く見られた工法で、瓦の下に土を敷いて固定する方法です。土葺き屋根と瓦屋根がもっとも重く、1坪約200kgの重さがあります。一般的な住宅30坪で計算すると、約6tもの重量が建物にかかっていることになります。
一方で、金属屋根のガルバリウム鋼板は約480kg程度と軽く、土葺き屋根・瓦屋根の約10〜12分の1程度となり、建物にかかる負担も少なくできます。
屋根を軽量化することで得られるメリット
ここでは、屋根を軽量化することで得られるメリットについて解説します。
耐震性が向上する
上述しているとおり、屋根を軽くすることで耐震性能が向上します。建物の重量が増えるほど耐震性能は低くなってしまいますので、耐震性能を高めるためには、建物の重量を減らし、重心を低くする必要があります。屋根の軽量化は耐震化の一助になるといえます。
建物の構造体への負担が減る
屋根を含めて、住宅は基礎や柱、壁などの構造体によって支えられています。それぞれの構造体がバランスを保つことで、地震に対しても倒壊しない住宅になります。
屋根を軽量化することで、それぞれの構造体への負荷が減ることになるため、住宅が長持ちすることにつながります。
屋根材の落下被害を防げる
軽量の屋根材が決して落下しないわけではありませんが、落下による被害を少なくすることはできるでしょう。
たとえば、瓦のような重い屋根材は、地震などが発生した場合、割れたり落下して崩れたりすることがあります。瓦は1枚でもとても重いため、落下して直撃してしまうと、大怪我する可能性があります。
さらに、落ちた瓦が飛散して、通り道をふさいでしまう可能性も考えられます。屋根材を割れにくい金属製などへ変えるだけでも、被害を少なくすることはできます。
倒壊までの時間がかせげる
現在の耐震基準では、震度6強〜7程度の大規模地震でも倒壊や崩壊しないしないことが条件となっています。
地震は振り子のように揺れますので、少しでも屋根の重量を軽くする対策をしておけば、避難するまでの時間をかせげます。
屋根が重いと、柱や壁に重度の被害を受けた場合、屋根の重さを支えきれずにすぐに倒壊してしまう可能性も考えられるため、少しでも軽くする対策をしておくとよいでしょう。
おすすめの軽量屋根材
ここでは、実際にどのような屋根が軽量でおすすめかについてご紹介します。
スーパーガルテクト
スーパーガルテクトは、アイジー工業が製造販売するガルバリウム鋼板の金属製屋根材です。屋根材と断熱材が一体となった製品で、遮熱性と断熱性に優れています。
平米単価が8,190円とほかの屋根材と比べると初期費用はかかりますが、屋根の耐久性と断熱性に優れており、冷暖房にかかるランニングコストを考えるとコストパフォーマンスには優れているといえます
横暖ルーフ
横暖(よこだん)ルーフは、ニチハ株式会社が製造販売する金属製屋根材です。横暖ルーフも断熱材が一体となった製品です。
特徴は、厚みが0.35mmと薄型で軽量ながら、遮熱塗装も施しているため、遮熱性と断熱性に優れている点です。屋根の軽量化と同時に夏の暑さを軽減したい人にはおすすめです。
スマートメタル
スマートメタルは、ケイミュー株式会社が製造販売する金属製屋根材です。スマートメタルは、一般的なガルバリウム鋼板を使用した金属製屋根材よりも、3倍以上もサビに強いエスジーエル(SGL)という素材を採用した屋根材になります。
サビに強いだけでなく、施工性にも優れています。左右から重ねて施工できるように設計してあるため、不要な屋根材を切断することなく施工できるため、施工性に優れています。
デメリットとしては、上記2製品とは違い断熱材との一体型ではありません。別途断熱材を追加する必要があります。
屋根の軽量化の工事方法
ここでは、屋根を軽量化するための工事方法について解説します。
全面葺き替え工事
屋根を軽くするリフォーム工事は、全面葺き替え(ふきかえ)工事になります。葺き替え工事は、すでにある屋根材をすべて撤去して、新しい屋根に取り替える工事です。
屋根工事は、カバー工法というリフォーム工事がありますが、カバー工法は今ある屋根材の上から被せる工事になるため、逆に屋根の重量が増えてしまいます。
瓦やスレートの屋根材を現在ご使用であれば、金属製の屋根材へ交換することで、屋根の軽量化ができます。最近では、意匠性の高いものや瓦を模したようなデザインのものまで発売されていますので、見た目を優先される方にもおすすめです。
工事費用と工事期間
工事費用は以下のとおりです。
<既存屋根解体処分・単価>
- ・コロニアル屋根 3,000円/平方メートル
- ・瓦屋根 3,100円/平方メートル
- ・金属屋根 1,200円/平方メートル
アスベストが使われている屋根の場合は、上記金額にプラス1,500円(1平方メートル)程度かかります。
工事期間に関しては、現在の屋根をすべて撤去する必要があるため、7〜10日程度を見ておくとよいでしょう。
横浜市の補助金・助成金をご紹介
ここでは、横浜市で屋根のリフォームをする方に、自治体の補助金や助成金が適用になる場合がありますので、ご紹介します。
横浜市木造住宅耐震改修促進事業
横浜市木造住宅耐震改修促進事業は、木造の個人住宅の耐震改修工事費用の一部を横浜市が補助する制度です。
<対象住宅>
- ・昭和56年5月末日以前に建築確認を得て着工された、2階建て以下の在来軸組構法の木造個人住宅
- ・無料耐震診断の結果、耐震指標が1.0未満と診断された木造住宅になります。
<補助限度額>
- ・一般世帯:100万円
- ・非課税世帯:140万円
自治体の補助金は、予算の上限に達した場合は、期限内でも終了する場合があるため、早めの申請をおすすめします。
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、住宅の長寿命化や省エネ化などに関してリフォームする場合に、支援が受けられるものです。
屋根の軽量化に関しても、劣化対策や耐震性能などの特定の性能項目を、一定の基準まで向上させることを目的としているため対象となります。
<補助限度額>
- ・長期優良住宅(増改築)認定を取得しないものの、一定の性能向上が認められる場合は、一戸あたり100万円
- ・長期優良住宅(増改築)認定を取得した場合は、一戸あたり200万円
補助率は、対象リフォーム工事などの合計の1/3となります。また、三世代同居対応や、若者・子育て世帯などでも補助限度額が異なります。
参考:国土交通省 令和5年度版 マンガでわかる長期優良住宅化リフォーム推進事業
屋根の軽量化についてのご相談はR-primeへ!
屋根の軽量化が推奨されている理由としては、屋根の重さは耐震性に大きく影響するためです。耐震化には屋根の軽量化をはじめ、壁や接合部の補強など、バランスよく補強することが重要です。
屋根を軽量化するうえでのメリットは、耐震性の向上や建物への負担軽減、屋根材の落下被害を防止、倒壊リスクの低減です。
屋根の軽量化には、国や自治体から補助金や助成金が適用になる場合もありますので、今回ご紹介した制度をうまく活用してみましょう。
R-primeでも屋根の軽量化のお手伝いが可能です。横浜市で屋根の軽量化をご検討であれば、ぜひ一度ご相談ください。ご相談や現地調査、お見積りは無料で承ります。
職人直営店ですので、お問い合わせから施工、アフターフォローまで自社職人が責任を持って対応いたします!
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